今日のお菓子は三題噺
[「金魚」「鉛筆」「楽器」](1/1)

 突然人間から文房具である鉛筆に変身してしまった奴が言った。

「いいなあ、金魚には自由がある」

 金魚鉢の中ですいすい泳ぐ赤い金魚は言った。僕はね、ドラムに変身したかったよ。ドラムさんはいいよねえ。楽器のドラムに変身した奴は、一人でにダダダダンと音を鳴らした。

「俺なんてうるさいだけさ。ボコボコと叩かれてよお……。俺はドMじゃねえんだぞ!」

 ダダダダン!

 変身した元人間三人はため息をついた。

「でも、音で何か主張できるだけいいですよ。僕なんか泳ぐだけだもんなあ」

 すると、鉛筆は言った。

「私は泳げもしない」
「しかし、あんたが一番主張することができるよ」

 ドラムはそう言うとダダダダンと音を鳴らした。

「何か、書いてみようかな」

 鉛筆が立ち上がると、金魚は鉛筆のいる机に注目した。ドラムも珍しく静かになる。

 鉛筆は身を削りながら、一つの言葉を書いた。金魚とドラムには字がよく見えないため、鉛筆になんと書いたのか訊ねる。

「ないものねだり」

 そう答えると、金魚とドラムは笑った。

「自分の能力だって捨てたものじゃない」

 鉛筆は倒れると、これから残すべき言葉を考えた。言葉を残すのは鉛筆の使命。金魚は泳いで風景を作り、ドラムが音で彩りを添える。悪くない、鉛筆は言葉を書き続けた。

- 30 -
前n[*][#]次n

/35 n

⇒しおり挿入

⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook


[←戻る]