今日のお菓子は三題噺
[「大人」「初雪」「ほっぺた」](1/1)

 その日は本当に寒かった。なかなか寝付けず、ホットココアを一杯飲んでやっとうとうとし始めたのだ。そこにきての電話だった。僕は無視しようと思ったが、彼女だろうなあ、と思って渋々携帯電話を手に取った。

「ねえ、外を見てよ」

 彼女は、うきうきとした声で言った。僕はやれやれと思いながら、カーテンを開けた。白い埃のような物が舞い降りていた。初雪だ。

「雪よ! すごい雪!」
「ああ、雪だな」
「積もるかな? 私そりしたいんだけど」
「積もらないよ。この程度の雪じゃ積もったとしてもそりはできない」
「む」

 彼女がほっぺたを膨らませる光景が目に浮かんだ。彼女はすぐにむっとなるし、言動に出る。

「なんとかしてよ」
「僕は神様じゃないよ」
「知ってるよ。冴えないロリコンのサラリーマンでしょ」
「ロリコンじゃない。昔の人はな、十四とか三で結婚してたんだぞ」
「そうやって、ロリコンを正当化する」
「君はもう大人だよ。精神的や幼さはあるかもしれないが」
「イノセンスよ」
「ふむ、イノセンス。どこで覚えた?」
「イノセンスはとても美しいの。それを失う大人は嫌い」

 僕は笑った。彼女は「は?」と言う。

「君は大人と付き合ってる。それに、僕にはイノセンスのかけらもないよ」
「ばか」

 電話が死んだ。イノセンスという響きに、僕はまた笑った。きっと彼女は、次の電話でイデオロギーと口にするかもしれないし、シュールレアリスム、と言うかもしれない。それとも、アンチテーゼかも。

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