INNOCENCE
■ [イノセンス](1/4)

 夢の中の出来事ーーそうやって頭の外に押し出して考えまいとしていたが、どうしてもふとした時にそれについて思案してしまう。それはとてもとても奇妙な体験だった。その体験をした時の年齢は九歳で、日時は八月の二十八日である。学校の宿題で提出した絵日記に記載されている。

 こんな絵だ。目の前にドンと恐竜がいる。赤と茶色と黄色のクレヨンで色塗りされていて、立派な後ろ足を軸に立ち、それとは対照的な小さな手をキョンシーのようにしている。足下には象がいるのだが、恐ろしく小さい。恐竜のくるぶし程の丈だ。

 子象、と思うだろうが、それは違う。大きな象なのだ。何故なら僕が背中に乗ると視点が二階立てのバスなみに高くなるからだ。

 ここで疑問が一つ浮かぶだろう。そう、僕は実際に象の背に乗ったのだ。そうして、遥か高い恐竜の顔を見上げた。おかしな話だろう。これは本当におかしな話なのだ。僕には象の堅いかさぶたのような皮膚の感触が、今も手や尻に残っている。

 恐竜が垂らしたねばねばした唾液の感触も、鼻を刺激する悪臭も、みんな覚えている。昨日、半日前、ちょっと前、さっき感じたように、今も強く鮮明に。

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