ヤドカリ男
★ [闇の部分](2/5)

「もうかれこれ……十年程前の事です」

 彼女はゆっくりそう言った。僕は念のためメモ帳とボールペンを持ち、彼女の話を一つも聞き逃さないぞ、という体勢に入った。

「彼女とは高校二年のときに同じクラスになって、席は私の前でした。それがきっかけで私は彼女と仲良くなったんです。あ、山瀬美果、というのが彼女の名前です」

 どんな人でしたか、と僕は尋ねる。

「そうですね、とても綺麗な子です。目は大きく人形のようでした。でも綺麗なのに内気で、友達が少なかったみたいです。私も友達は少なかったので、私たちはいつも一緒でした。

 休み時間は話をし、お昼ご飯を一緒に食べ、休みの日はカラオケなんかに行きました。

 彼女はとっても可愛いのに彼氏はいませんでした。告白を何回かされたようですが、みんな断ったそうです。

『なんで彼氏を作らないの?』と私は尋ねました。彼女は、私と遊べなくなるからって言ったんです。私はとても嬉しかった。ああ、私の事大切に思ってくれてるんだな、と思いました」

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