ヤドカリ男
■ [変身〜不幸か幸いか〜](2/2)

 朝目を覚ますと、男は猿になっていた。

 それは不幸か幸いか。

 男は窓を開け、外に飛び出た。人々がきゃあきゃあ騒ぐ。しかし男は何とも思わない。人々が叫ぼうが、もう男の知った事じゃない。服を着ず、性器を丸出ししても、別に構わない。

 男は人間が持っていた複雑な思考を失っていた。今、男に存在する思考は、食べ物を探す事、子孫を残すために、雌を探して交わる事。ただそれだけ。

 もう思い悩む事はない。漠然とした将来への不安も、職場でのストレスも、人間関係も、親の介護も、頭からするすると抜け出していた。

 男は不幸か幸いか。ある意味不幸である意味幸い。あるいはどちらでもないのかもしれない。不幸か幸いか判断する能力が欠如しているからだ。

 しかし問う。それは不幸か幸いか。

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