ヤドカリ男
■ [現代に感謝を](4/4)

 娘は白装束の服を着せられ、武装した兵に囲まれて山城を出た。山を下っている最中に考えごとをした。私は何のために生まれてきたのだろう。人柱になるため?

 城下町を進み、建築途中の城の下まできた。城の脇には穴が掘られ、穴の横には積もった土があり、近くに木の棺桶があった。

 人が集まってきた。その中に夫婦の姿があった。夫婦は泣いていた。娘は夫婦を見つけると微笑んだ。諦めから出た微笑みだった。

「最後に言いたいことはないか?」と兵は娘に尋ねた。「おかあ、おとう、今までありがとう!」娘はそう叫ぶようにして言った。

 娘は自分から棺桶に入った。そして身体が収まると蓋がされた。兵が数人がかりで棺桶を持ち上げ、穴に落とした。そして砂をかけた。

 棺桶の中は真っ暗だった。土が被さる音がする。次第に息苦しくなってきた。

「時代が違ったら、私は幸せになれたのかな……」

 娘は最後にそう呟いた。

 城は無事に完成した。城の近くには娘を祀る社(やしろ)が設けられた。少女は今でも冬眠を続けた熊のように眠っている。

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