今日のお菓子は三題噺
[『雪』『真夏』『土星』](2/2)

 あまりの即答に、リングの男は苦笑した。

「少しは考える努力をしたのかい?」
「いや、頭が痛むんだよ」
「まあ、いいさ。一方で先入観は崩しやすいんだ。日本人特有のさ、同調性ってあるよね? 固定概念に縛られるのは、日本人にありがちなんだよ。更に言えば、これも固定概念からきてる。僕の星では、日本人という民族は、他人との同調によって安心感を得るものだと思われてる」
「それで?」
「つまりさ、固定概念からの脱却は、同調からの脱却でもある。日本人からすると、それは少々難しい話だ。一方で先入観は個人レベルな物だから、簡単に払拭できる」
「雪国の話は?」
「雪国の人は寒さに強いからという固定概念を持つと、多くの人がコートを貸さないわけさ。先入観は個人レベルだから、誰かがコートを貸すだろうね、先入観を払拭してさ」

 男は納得しきれない顔をする。どうしたものか、リングの男はそう思った。

「ところで土星人はさ、この星に来る前に何か先入観や固定概念にとらわれなかったのかい?」
「美しい自然を壊しているから、きっと野蛮なんだと思ってはいたよ」
「なるほど。僕は土星人に敬意を持ってるよ。ガス惑星をテラフォーミングするって、考えられない。思ったんだけど、土星の平均気温はひどく低いから、地球の真夏はこたえるんじゃない?」

 リングの男は笑った。壁の時計をちらりと見て

「問題ないよ。ああ、こんな時間か。さて、土産物を買って帰るとするかな。君、先入観や固定概念全てが悪いわけではないが、それにとらわれすぎては視界が狭くなるよ」

 男はポカンとした。リングの男は空を見上げ、輝く土星を見て笑う。 夜でも真夏だと気温は高かったが、リングの男にとってはなんともなかった。

「あ、君。えっと、金星に帰るには、同じ船を使うんだっけ?」

 リングの男は、にやにやとしながら言った。

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